2011年3月9日水曜日

2016年の企業ネットワーク

今から5年後の企業ネットワークがどうなっているかを勝手に予想してみたので、せっかくだからご紹介しましょう。

まずはイメージ図から。

現在主流の移動体通信は3Gと呼ばれる技術です。さらに最近ではドコモのLTEなど3.9G(これを4Gと呼んでも良いことになっているので、4Gと呼ぶこともあります)通信などもスタートし、移動体通信の高速化が進んでいます。
この流れは今後さらに加速し、少なくともWiMAXやXiのようなLTEサービスがほとんどの地域で使えるようになって、一部の地域ではさらに高速な4Gサービス(現在ではAdvanced-LTEが有力)が始まるころでしょう。
Advanced-LTEとは、2014年頃から実用サービスが始まるだろうと予想されている高速通信技術で、上り下り1Gbps(論理値でありサービス開始時に1Gbpsが出るかはわかりません)での高速通信が可能となります。すなわち、このタイミングで既存の有線ネットワーク(Bフレッツなど)より速くなります。
これによって、企業の外部接続ネットワークは「有線ありき」の世界から「ほぼ無線」の世界に移行するわけです。「ほぼ」と付けたのは、例えばプリンタなど全ての端末が4G対応になることは考えにくく、既存のLANがなくなることもないからです。このような既存LAN機器は4G対応ルータが集約するでしょう。

このような無線をベースとしたネットワークのメリットとして考えられるのが、たとえば出先や社内といった物理的な場所にとらわれることなく、どこでも同じように仕事ができるようになることです。
これにより、社内のフリーアドレス化(特定の机を持たず、社内のどこでも仕事ができる環境)も推進されるし、在宅勤務(テレワーク)も導入しやすくなります。そもそも大きな事務所を構える必要すらなくなります。

ここで重要な役割を持ってくるのが、キャリア(ドコモのような通信事業者)、もしくはキャリアから回線を借り受けてサービスを提供するMVNO事業者です。具体的には、以下のようなサービスを法人ユーザに対して提供できるようになるでしょう。

  1. 仮想LAN機能
  2. ファイアウォール機能
  3. VPN終端機能
仮想LAN機能というのは、契約した法人ユーザには独自のAPNを払い出し、同一企業間での端末同士の通信を保証しつつ、それ以外から通信は遮断するサービスです。まさに4Gネットワーク上にHUBがあるようなイメージです。専用APNの払い出し以外に、個別のユーザ認証機能を持つことも可能でしょう。

ファイアウォール機能とは、インターネットへの接続ポイントにおけるセキュリティ対策で、この機能によって法人ユーザが安心してインターネット接続ができるようになるとともに、企業としても情報漏洩などのリスクを減らすことが可能になります。
キャリアがファイアウォールを持つことにより、契約法人が多くなればなるほど、より効率的な防御システムが構築されることになります。これはGoogleがGmailで実施しているスパムやウィルス対策などと同じ発想です。

また、5年後には企業の多くがクラウド基盤を利用して社内システムを構築している(プライベートクラウドもしくはハイブリッドクラウド)と想像できます。特に先日、Amazon Web Services(AWS)が東京にデータセンターを開設したことで、いままでクラウドの障壁となっていた地理的な問題が解決されたため、より積極的なクラウド採用が予想されます。

そこで必要となるのが、クラウド基盤とキャリアのセキュアな接続です。
キャリアがクラウドサービスも提供するという発想ももちろんありますが、クラウドはワールドワイドでの規模のビジネスであり、AWSなどの優位性は変わらないと考えています。
そこで、AWSなどのクラウド基盤とキャリア間でVPNによる閉域接続を提供することで、社内のサーバを安全にクラウドに構築することができるようになります。

端末がすべて4Gを使うとすると、ランニングコストが高くなるのではという疑問も出るでしょうが、考えてみれば現在もノートパソコンやスマートフォンでほぼ一人1回線、もしくはそれ以上の回線契約をしているわけです。であれば、既存のBフレッツやISP料金がなくなり、サーバーやファイアウォールを保有する必要もありませんので、場合によってはコスト削減も可能性です。

実はこの予想、かなり現実的です。
なぜなら、現在提供されている企業向けの直収サービス(たとえばドコモのビジネスmoperaアクセスプレミアムアクセスプロ)では、専用APNを払いだす企業向けのセキュアなリモートアクセスを提供しており、上記ネットワークに近い機能が提供されます。
Xiがもう少し普及するようになれば、現実的に今回予想したこのような仕組みを採用する企業が出てくるかも知れません。
キャリアによっては、これから土管ビジネスになるのではと心配されているところもあるようですが、僕の考えはまったく逆で、5年後には企業にとってもっとも重要なインフラ提供会社になるだろうと予想しています。企業が回線を同一キャリアに統一することが原則としたサービスなので、ユーザの囲い込みにも効果が期待できます。
心配なのは動きが遅いこと。
MVNOが先行することも十分予想される中で、キャリアならではの訴求力のあるサービスを的確にリリースしてくれることを期待しています。

3 件のコメント:

  1. > キャリアがファイアウォールを持つことにより、契約法人が多くなればなるほど、より効率的な防御システムが構築されることになります。
    というのは、ぶら下がっている法人が多いほうがその分お金をかけたシステムができるという意味ですか?

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  2. >文雄さん

    お金ももちろんですが、人的リソースもです。
    さらに不正アクセスなどのインシデントも集中管理できるので、より効率的な防御システムが構築できると予想されます。

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  3. かつみさんの、未来像はとっても現実的だとおもいました。
    企業にとっても、キャリアにとっても有益なシステムなので、近い将来には、移行していくと考えられます。

    ただちょっと気がかりなことは、企業のIT基盤を、すべてクラウドを利用した場合、内部統制(JーSOX)や外部監査対応のため、専用の人員を配置する必要があります。
    とくに中規模企業は移行に躊躇する傾向が見受けられると予想しています。

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