2011年5月27日金曜日

スマートタップ

ワイヤレスジャパン2011に行ってまいりましたので、気になったものをいくつかに分けてご紹介します。ワイヤレスジャパン2011の開催概要はこちら

従来はビッグサイトの東ホールで開催されていましたが、今年は西ホールとやや小さめな規模での開催となりました。ドコモとKDDIが大きなブースを出す一方、ソフトバンクモバイルは今年も出展なし。ワイヤレスジャパンだと、展示するものが基本的にiPhoneとiPadが中心となるので、出展する意味が無いという戦略なのかも知れません。
さて、今回は規模が小さかったことに加え、来場者もそれほど多くなく、比較的ゆっくりと見てまわることができました。その中から気になったものをいくつかご紹介します。
まず今回はドコモが展示していた「スマートタップ」です。

ドコモブースでは、LTE Advanceのデモがかなり大きく展示されており、人だかりとなっていました。ただ、今回の展示会で事前に気になっていたのが「スマートタップ」です。
先日の組み込み開発技術展でも同じようなコンセプトの製品が参考出展されていましたが、いわゆる「電力の見える化技術」の製品です。
サービスの基本的な構成は、「スマートタップ」と呼ばれるコンセントと、その親機となる「ワイヤレス対応トランスレータ」、情報を蓄積して閲覧可能とする「エネルギー管理ASP」からなります。スマートタップには、電力情報を取得してサーバにアップロードする機能のみのものに加え、何らかの制御が可能な制御機能付きスマートタップが用意されていました(以下の写真。ちなみに制御付きは参考出展)。

実際の動作としては、スマートタップで計測したデータが、まずは親機に送信され、そこからインターネットを通じてドコモのASPサーバに蓄積されていきます。ユーザはケータイやスマートフォンを使ってASPサーバに接続し、電力量を確認するとともに、制御付きタイプのスマートタップに対して何らかの指示(今回は電源ON/OFF)を行うというものです。
今回は、扇風機や電気をケータイからON/OFFできるデモが展示されていました。また、使用電力はPC上のグラフとしても確認ができるようになっていました。

スマートタップと親機の間はZigBeeではなく、Z-Waveという技術を使っています。
Z-Waveは日本ではあまり馴染みのない技術なのですが、今回シグマデザインさんのブースでこのZ-Waveが出展されていたので、そちらで聞いた内容も併せてレポートします。
現時点で日本のメーカーはあまりZ-Waveのアライアンスに参加していませんが、ワールドワイドではかなりの数のメーカが賛同しています(ちなみにドコモは日本のキャリアとしては唯一参加しています)。
この手の近距離通信技術(HAN:Home Area Network)としてはZigBeeが有名ですが、Z-Waveとは何が違うのかを聞いてみました。一番の違いとしては周波数らしいです。ZigBeeは現在2.4GHz帯を利用しているので、無線LANとの干渉が問題となりますが、Z-Waveは900MHz帯を利用するので干渉が少ないというメリットがあります。
ただ、問題なのがこの900MHz帯の扱いです。
日本では2008年に952MHz帯が総務省から割り当てられたため、Z-Wave製品についてもようやく出荷できる状態になったのですが、ここにきて周波数の再編問題が浮上。2015年からは920MHz帯に移動しなくてはいけなくなったそうです。
ということは・・・。
そうです。せっかく今回展示まで漕ぎ着けた「スマートタップ」は、今のままでは2015年までしか使えないということなんですね。
今回シグマデザインさんのブースでは、新しい周波数帯にも対応できるZ-Waveモジュールも出展されていました(ミツミ電機さん)。
左側の指先に乗るほど小さい黒いチップがZ-Waveのモジュールです。

総括

スマートタップ自体はすでにいつでも出荷できるようになっているようで、ドコモの説明員さんに確認したところ、ご連絡いただければ明日にでもお売りしますよとのことでした。
ただ、周波数の話は販売時に注意事項として説明されるものと思われ、詳細な金額についてもその時に聞くことになりそうです(現時点でスマートタップ自体は5,000円程度とのことでした)。
一応興味があるので、さっそく連絡だけはいれてみたいと思います。

(2011/6/1 追記)
WJでもらったチラシに記載されていたMLのアドレスが間違っていて、連絡を取るのに時間がかかってしまいましたが、本日ドコモ様より以下のご連絡がありました。

(前略)
お問合せ頂きましたスマートタップに関しまして、
ワイヤレスジャパンでのご説明で誤解を招いてしまう
情報をお伝えしまいましたので本メールにて訂正致します。

スマートタップにつきましては、機器の検証は終了間近
であり、機能的にはお客様へ提供できるレベルまで
に達しているとおもいますが、機能面以外で解決すべき
項目もございますため、現状では販売時期および価格に
つきましては「未定」となっております。

このような状況でありますため、大変申し訳ございませんが、
販売可能なご連絡が出来るまで今しばらくお待ち頂けませんでしょうか?
(後略)


ということですw。

参考:
ドコモの『スマートタップ」公式紹介ページ
シグマデザインの小川副社長によるZ-Waveの解説(YouTube)

2011年5月18日水曜日

KDDIのナイスなニュース

昨日(17日)はKDDIの新製品発表会でした。
新しい端末のニュースがたくさん出てきた中で、端末ではないところでKDDI関係の気になったニュースを2つピックアップ。



インキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」の開始について
「KDDIムゲンラボ」と名付けられた主にAndroidを中心としたアプリの開発者向けの3ヶ月間に渡ったプログラムです。内容をみると、スタートアップ企業などこれから新しくAndroidを中心にビジネスを展開していこうとしている方々をターゲットにしていこうという感じです。
応募者の中から選抜されたチーム(個人でも可)は、六本木に用意される専用のラボでKDDIから色々な支援を受けることができます。面白いのは、開発支援だけにとどまらず、経営支援も受けることができる点です。優秀なチームには「au one market」などプロモーションも提供される予定です。
KDDIは以前にも、FeliCa対応のAndroidアプリのハッカソン(記事はこちら)で技術サポートを行っており、より積極的な開発者支援を始めたということになります。
Androidの可能性はまさに「∞(無限)」であり、早い段階から優秀な開発者を陣営に取り込む作戦とも見えますが、個人的には「共創」戦略なのかなと思います。たとえば今回発表されたFacebookとの連携や、すでにサービスが始まっている「Skype | au」など、外部のサービスとのコラボレーションを打ち出すことによって、エコシステムを上手に構築していっているなという印象です。
いずれにしろ、Androidで一発当ててみたいと思っている方は、さっそく応募してみると良いかと思います。個人的には僕も応募したいくらい。



2つ目のニュースは、今朝の日経にでていたもの。
KDDIなど、節電家庭に「エコポイント」 15%達成で月1000円分
※日経の記事なので、会員でないと読めないかもしれません。

こちらはまさに現在、旬な話題である「節電」に関するニュース。要約すると、前年同月比で15%の節電を達成した家庭に対して、KDDIが1,000円分のエコポイントを出しますよというものです。ただし、エコポイントとはいっても、KDDIが払いだすのは「auポイント」なので、au内でしか利用できません。期間は今年の7月〜9月で、他にも参加企業が増えてきたりすれば、10月以降も継続する可能性ありとのことです。
auポイントじゃ使い道がないなぁとは思いますが、この仕掛け自体は非常に面白いと思います。
「節電」は今や一大ブームとなっており、とくに家計を預かる主婦にとっては、節電をゲームのように楽しんでいる人も多いと聞いています。そのような家庭では、節電してポイントまでもらえるなんて、まさに一石二鳥。ウハウハなわけです。
ただ、僕がこのニュースで気になったのは以下の2点です。

  1. 各家庭の電力情報が東電からKDDIに渡せること(もちろん承諾が必要)
  2. 家庭向けの無線通信機能付き電力監視装置の実験をすること
まず一番目。
東電から情報が取れるなら、これを使ってSPモードのサービス作れるんじゃないですか?>ドコモ様。もっといえば、APIの開放によって一般の開発者もサービスが作れるんじゃないの?ってことです。
国際宅配便のFedexが荷物のトレーサビリティをオープンにしてユーザの信頼を獲得したのは有名な話ですが、東京電力もこういう情報開示を積極的に行うことで、失った信用を取り戻すことが大切だと思いますがどうでしょう。

次に2番目。
実は分電盤に取り付ける電力監視装置は今もありますし、先日の組み込み開発技術展でも注目されていました。

組み込み開発技術展で展示されていた電力監視装置。
分電盤から伸びる電力線にクランプをかませて電流の測定をおこなっていた。

ただ、現時点では価格がかなり高くなってしまい、企業ユースならともかく、家庭での普及にはまだ時間がかかりそうです。
そこで今回KDDIでは、参加者のうち200世帯にこのような装置を設置し、無線で情報を取得する実験も併せて実施するとのことです。
スマートグリッドは着実に進んできてはいるものの、主にコスト面でなかなか普及していないのも事実です。しかしながら、今回の震災を期に節電意識が高まっていることは間違いなく、このタイミングで先手を打ってきたKDDI、なかなかやるなぁというのが僕の感想です。